古いプレス機に外付けセンサーを取り付け、そこから取得したデータをモニターのグラフとして可視化するイメージ
配線をいじらずに、外側からデータを取る

「うちの機械は古いから、データなんて取れない」

現場でよく思ったことです。

私自身、制御盤を開けてリレー制御を見た瞬間、固まった記憶があります。ラダー図もなく、電気図面とにらめっこして配線を目で追うしかない。通信機能もセンサーもなく、図面すら残っていない。今でも、どう動いているかをすべて把握するのは簡単ではないと考えています。

そんなレガシー装置を前にすると、データを取得するなんて、と諦めてしまいそうになります。

ですが、配線を一切いじらなくても、レガシー装置からデータは取れます。今回は、その方法を整理したいと思います。

外側から取れる情報は3種類ある

レガシー装置からデータを取る方法は、大きく3系統に分かれます。

①電流値

モーターや分電盤に、クランプ式のセンサーを挟むだけで取得できます。配線を切る必要はありません。

電流には、設備の負荷状態が現れます。切削中なのか、空転しているのか、異常な負荷がかかっているのか。電流の波形パターンを見ることで、こうした状態が読み取れます。

②振動

モーターやベアリング付近に、外付けの加速度センサーを貼り付けます。

振動には、回転体の劣化が現れます。軸受けの摩耗、アンバランス、芯ズレ。これらは壊れる前に、振動の波形に変化として出てきます。

③信号灯・ランプの横取り

レガシー装置の多くは、リレー制御が中心です。「起動ランプが点く」「加工完了ランプが点く」といった動きの連続で動いています。

この信号線を、被覆の外からクランプするだけで、ON/OFFの情報を取り出せます。配線を切ったり、制御盤を改造したりする必要はありません。

初めて外付けのセンサーを付けるなら

3種類の中でも、最初の一歩として扱いやすいのが振動センサーです。

入り口として使いやすいのが、ifmの振動センサーだと思っています。専用のソフトウェアがオプションで用意されていて、使っているベアリングの型式を入力するだけで、監視すべき周波数を自動で計算してくれます。振動診断の専門知識がなくても、型式さえ分かれば設定できるのが強みです。もちろん、自身で調べて入力することもできます。

さらに、振動診断増幅器「VSE100」を組み合わせると、入力範囲が0〜10mA、IEPE、4〜20mAに対応しているため、振動センサーだけでなく、電流値や温度・湿度といった信号も同じ機器で取り込めます。1台で複数の情報を扱えるので、先ほど挙げた3種類のうち、電流と振動をまとめて任せることもできます。

カタログ価格は15万1,900円でした(2026年9月時点)。詳細は メーカーの製品ページ をご確認ください。

もっと安く、という場合

もう少し予算を抑えたいという場合は、自作のマイコンという道もあります。Raspberry PiやArduinoに、市販の振動センサーや電流センサーを繋ぐ方法です。

解析の中身は自分でプログラムを書く必要がありますが、部品代だけなら数千円から始められます。専用機器のように「型式を入力するだけ」とはいきません。ですが、「何が測れて、何が分かるのか」を自分の手で確かめられるのは、自作ならではの利点だとも思います。

大事なのは、最初から完璧な仕組みを作ろうとしないことだと思います。

デジタルツインの土台になる

ここまで集めたデータは、そのままデジタルツインの材料になります。

設備の3Dモデルの上に、いつ動いたか、そのとき電流や振動はどうだったかを重ねて表示する。すると、画面を見るだけで「この設備は今、正常に動いている」「この時間帯だけ振動が大きい」といったことが一目で分かるようになります。

これまでは、ベテランが音や振動を体で感じ取って判断していたことだと思います。それを、外付けのセンサーが代わりに拾ってくれます。

そしてこのデータが蓄積されていくと、単なる異常検知にとどまりません。正常な状態のパターンが分かれば、そこからのズレを早い段階で捉えられるようになります。壊れてから直すのではなく、壊れる前に気づく。これが予知保全です。

デジタルツインの価値は、まさにここにあります。センサーが拾った現在のデータと、これまで蓄積してきた過去のデータを重ねて見ることで、「いつもと違う」を数字で判断できるようになるからです。

さいごに

ベテランの勘は、長年の経験の蓄積です。センサーとデジタルツインがやっていることも、実は同じ構造なんだと思います。

データを蓄積し、そこからのズレを察知する。ベテランの頭の中にあった判断基準を、外に取り出して、誰でも見られる形にする。それが、レガシー装置から始める予知保全、デジタルツインだと私は考えています。

古い設備だからと諦めるのではなく、まずはデータを取ってみる。その一歩を後押しできたら嬉しいです。

アイツインは、中小企業をデジタルツインで最適な状態に仕上げ、確かな技を未来へつなぎ、関わるすべての現場を笑顔にしていきます。

どの設備から手をつけるべきか、どのセンサーが自社の工程に合うか。現場診断も承っておりますので、お気軽にご相談ください。