搬送作業を産業用ロボットで省人化する場合、いくらかかるのか。アイテムの発掘から稟議書の作成、設計まで一気通貫で担当してきた経験をもとに、費用の内訳を項目ごとにまとめました。

省人化(しょうじんか)を検討しているが、そもそもいくらかかるのか、その規模感がつかめずにいるという方の参考になればと思います。

この記事のポイント

  1. 搬送作業をロボットで省人化する場合、費用の目安は1,000万円〜2,000万円
  2. ロボット本体の価格は全体のおよそ3割にすぎず、残り7割は制御盤・カメラ・安全対策・工事・設計などの周辺費用
  3. 設置後の現場調整にも工数がかかるため、見積もりの段階からその期間を見込んでおく必要がある

なぜこの金額が目安になるのか

作業者1名にかかる固定費を、年間600万円として考えます(年収450万円に、社会保険料などの会社負担1.3倍を乗せた想定です)。夜勤がある工程であれば、2名で1,200万円の固定費になります。

これを1年で回収する場合、目安として1,200万円以内で省人化できれば、2年目以降は投資した金額が利益に変わっていく、という考え方になります。

  • 1年回収:1,200万円を軸に予算を組む
  • 2年回収:2,400万円を軸に予算を組む

回収期間の設定は、経営判断によって変わります。1年で回収したいと考える経営者もいれば、2〜3年かけて回収できればよいと考える方もいます。いずれにせよ、費用対効果を数字で把握しておくことが重要です。ここが数字として説明できないと、補助金を申請する際の説明も難しくなります。

そして、ロボット本体は全体の3割程度にすぎません。設置後の調整工数も、別途かかります。以下、あくまで一例ですが、規模感をつかむ材料としてご覧ください。

想定する作業

今回は、下記の作業を省人化する想定で試算します。ワーク重量10kg、サイズ300mm程度のものを、両手で持って所定の台車へ置く作業です。夜勤を含む2名体制を想定しています。

  1. 流れてくるワークのOリング、コネクターピンを目視で品質確認(裂け・ねじれ・折れの有無)
  2. 搬送装置からワークを両手で取り出す
  3. 斜め後方に振り返りながらワークを180度反転、3歩歩いて次工程の台車に載せる
  4. 元の位置に戻り待機

現場でよく見られる、一般的な搬送作業です。

費用の内訳

以下はすべて参考値です。実際の導入にあたっては、必ず個別の見積もりをお取りください。

項目参考価格
1. 産業用ロボット(35kg可搬)300〜450万円
2. 操作盤・制御盤関係150〜250万円
3. カメラ機器(2台)60〜80万円
4. 空圧機器50万円
5. 把持関係70万円
6. 安全機器40〜50万円
7. 安全柵50〜100万円
8. ロボット架台30〜50万円
9. センサー部品・機器系60〜80万円
10. 電源工事30〜50万円
11. 設計・立ち上げ個別見積り

1. 産業用ロボット(35kg可搬)
反転動作があるため、6軸産業用ロボットを選定します。ワーク自体は10kgですが、ハンド(エンドエフェクタ)やチャック関係の重量を含めると20kg近くになるため、安全率を見て35kg可搬を選びます。台数がまとまる場合や継続発注が見込める場合は、価格交渉の余地もあります。

なお、協働ロボットという選択肢もありますが、速度・繰り返し精度の実績では産業用ロボットに分があります。精度をあまり求めない用途や、3Dカメラと組み合わせたバラ積みピッキングなどでは、協働ロボットが向くケースもあります。

2. 操作盤・制御盤関係
PLC、インバーター、リレー、セーフティリレー、ブレーカー、トランス、タッチパネル、表示灯、スイッチ類、配線・ケーブル関係。ロボットを動かす「頭脳」にあたる部分で、見落とされがちですがロボット本体に次ぐ費用です。

3. カメラ機器(2台)
目視確認をカメラに置き換える部分です。画像処理の精度は、教師データの整備によって現場に合わせ込む必要があります。

4. 空圧機器
シリンダー、ソレノイドバルブ、継手、ホース、三点セット、残圧弁、圧力スイッチなど。位置決めや昇降、押し出しに使われ、搬送設備では必須の要素です。

5. 把持関係
今回はモーターで掴む機構を想定しています。ワークが複雑な形状の場合は、把持部の設計を個別に行うこともあります。

6. 安全機器
エリアセンサー、セーフティドアロック、非常停止ボタン、警告ランプなど。安全に関わる部分は、削るべきではない必要経費と考えています。

7. 安全柵
産業用ロボットは柵での囲いが求められるため、必ず発生する費用です。

8. ロボット架台
強度計算を含めた設計が必要な部分です。

9. センサー部品・機器系
各種センサー、位置決め治具、ワーク受け部など。実際に稼働させてから、最も調整が発生しやすい箇所です。

10. 電源工事
分電盤からの引き込み、一次側配線。

11. 設計・立ち上げ
工数の目安は機械設計2〜3週間、電気設計1〜2週間、現地立ち上げ1〜3日です。社内設計か外注かで費用が大きく変わるため、金額は個別にご相談ください。

合計とその内訳が示すもの

合計すると、およそ925万円から1,466万円。ここで注目していただきたいのが、ロボット本体が占める割合です。300〜450万円ですから、全体のおよそ3割にすぎません。

残りの7割は、制御盤、カメラ、空圧、安全対策、工事、設計といった周辺部分です。省人化の見積もりが想定より高くなる背景には、この構造があります。ロボットのカタログ価格だけで予算を組むと、実際の導入時に想定外の費用が発生しやすくなります。

設置してからが本番です

この金額には、設置後の現場調整工数が含まれていません。設備は据え付けてすぐ安定して稼働するものではなく、本流ラインとの合流やカメラの検知精度など、必ず調整が必要になります。設計段階ですべてを盛り込むことは難しく、現場での微調整力が導入の成否を左右します。

見積もりの段階から、この調整期間を見込んでおくことをお勧めします。

ヒューマノイドは、この金額を変えるか

近年話題のヒューマノイド・フィジカルAIについても触れておきます。一部メーカーは、数百万円台での提供を表明しています。従来の産業用ロボット導入費と比較すれば、大幅に安価です。安全柵や専用治具が不要になる可能性もあり、うまく運用できれば省人化に非常に適した存在になり得ます。

一方で、現場実務の視点では検討すべき点も多くあります。

  • 保守・メンテナンスの体制
  • 停止時の復旧手順
  • 作業エリア外への退避方法
  • 教示・検査に関する資格の扱い

導入初期は、産業用ロボットや協働ロボットが現場に定着していった過程と同様に、時間をかけて運用ノウハウを蓄積していく段階になると考えられます。

まとめ

今回は、経験をもとにした参考金額をご紹介しました。実際の金額は、現場条件によって大きく変わります。正確な見積もりは、個別の現地調査が必要です。

金額の内訳を知ることは、導入を諦めるためではなく、判断材料を持つためのものです。ロボット本体は全体の3割であり、既存設備の制御機器を流用できれば、総額を抑えられる余地もあります。搬送工程の省人化・省力化をご検討の際は、現場診断からお気軽にご相談ください。

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