射出成形をはじめとする樹脂・プラスチック成形の現場は、金型・温度・圧力・スクリューの動きといった多くの条件が絡み合い、品質を大きく左右します。この記事では、成形現場特有の課題と、IoT・デジタルツインの活用の方向性を解説します。
成形現場が抱えやすい課題
設定条件が「紙」と「経験」に頼りがち
成形加工では、製品ごとに温度・圧力・スクリューの動きといった設定条件が異なります。これらの条件を紙の記録で管理していると、過去の設定情報を探すのに時間がかかり、結果として担当者の経験と勘に頼らざるを得なくなります。実際に、ある射出成形メーカーでは、こうした紙による管理から脱却するため、設定値や稼働中の温度変化、スクリューの動き、生産個数といった数値を数年にわたり収集・蓄積し、品質改善や生産効率向上に役立てた事例が報告されています。
品種切り替え時の条件出しに時間がかかる
多品種の成形を行う現場では、製品が変わるたびに設定条件を再調整する「条件出し」が発生します。過去の類似条件をすぐに参照できなければ、その都度試行錯誤が必要になり、段取り替えの時間がかさみます。
IoT・デジタルツインでできること
設定条件・稼働データの蓄積と可視化
温度・圧力・スクリューの動きといった数値を継続的に記録することで、紙の記録では難しかった「過去の類似条件をすぐに呼び出す」ことが可能になります。品種切り替え時の条件出しにかかる時間短縮にもつながります。
異常の早期検知
蓄積したデータから通常時の変動範囲を把握しておけば、温度や圧力が普段と異なる動きをした際に、不良品が量産される前に異常を検知できます。
図面のない金型・設備のデータ化
古い金型や周辺設備の図面が残っていない場合でも、3Dスキャンによって現物をデータ化できます。金型の保管・管理や、周辺レイアウトの検討に活用できます。
小さく始める
成形機すべてに一度に導入する必要はありません。まずは主力製品を成形する1台の成形機から、設定条件と稼働データの記録を始めることをおすすめします。
まとめ
樹脂・プラスチック成形の現場では、紙と経験に頼った条件管理が、品質のばらつきや条件出しの時間ロスにつながりやすい構造があります。IoTによるデータ蓄積は、この属人化した管理を、誰もが参照できる形に変えていく手段になります。
参考
- 情報処理推進機構(IPA)「中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査 報告書」(2020年)
